親権を辞任することができるか
親権を行う父または母は、やむを得ない事由がある時は、家庭裁判所の許可を得て、親権または
管理権を辞任することができます。
親権は、子の福祉のために親に課せられた義務であり、社会的責任ともいうべきものですから
親権者が自由に辞任することはできません。場合によっては、親権の辞任を認めるほうが子どもの
利益にかなうこともあるので、やむを得ない事由がある場合のみ辞任できるのです。
したがって、やむを得な事由があるかないかを判断するのは、辞任を希望する親権者ではなくて
家庭裁判所ということになります。
やむを得ない事由にあたるとされた事例としては、親権者が刑に服する場合、重病である場合
長期間海外に滞在する必要がある場合などがあります。
親権を辞任したいと思う親権者は、自分の住所地の家庭裁判所へ、親権辞任の許可、審判を申し立てる必要があります。
家庭裁判所が、許可の審判をした場合、辞任許可審判書の謄本を添えて、親権辞任の届出を市区町村に
しなければなりません。この届出により辞任の効力を生じることになります。
親権の辞任があると、当然親権者がいなくなります。一方の親が自動的に親権者になるということではありません。
これは親権喪失の場合と同じです。親権を辞任した者は、遅滞なく後見人を選任するよう家庭裁判所へ申請しなければ
ならない義務があります。
やむを得ない事由によって親権を回復することができます。親権回復許可の審判があった時は、回復許可審判の謄本を
添えて、親権回復届を市区町村長に届出なければなりません。
この届出によって回復の効力が生じることになります。この場合、後見は終了することになります。
親権を喪失喪失させられる場合もある
親権者である父または母が、親権を濫用したり、または著しく不行跡である場合には、家庭裁判所は子どもの親権または
検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができます。
同様に親権者である父または母の管理が不適当であったり、その子の財産を不当に危うくした場合は、家庭裁判所は
子の親権または検察官の請求によって、親権のうちの財産管理権のみの喪失も宣告することができます。
当然のことながら、破産宣告を受けたり、子の財産を不当に処分したり、子に暴行虐待を加えたり、子の身上監護を
怠ったり、性的不品行や飲酒、賭博などによって子どもの教育に悪影響を与える親権者では子どもの利益にはならない
からです。
親権喪失宣言の申立てがあった場合、家庭裁判所は子どもの利益のために必要があると判断すれば、申し立てによって
審判が確定する前でも、親権者の職務の執行を停止させたり、あるいはこれを代行する者を選任することもできます。
喪失宣言審判が確定するまでに、とりあえずこうした処置をしておかないと、その間、子どもの福祉を損ねる結果になったり
取り返しのつかない財産上の損失を被ったりすることがあるからです。
親権喪失宣告がなされると、子どもの親権者がいなくなりますので、後見が開始されます。一方の親が親権者になりたい
のなら、親権喪失の申し立てではなく、親権者変更の申し立てをすべきでしょう。
親権または管理権喪失の原因が止めば、本人の親族の申し立てによって、家庭裁判所は失権の宣告を取消すことができます。
この場合、後見は終了することになります。
親権者を定める基準
家庭裁判所や地方裁判所の審判や裁判で親権者を決めるときには、決定基準となるものを法律は定めていませんが
一言でいうなら、子どもの福祉が中心に判断され、もっと簡単にいうなら、どちらの親を親権者と定めたら子どもに
利益があり、幸福であるのかということですが、親の都合で決めるものではありません。
具体的に、次のような審判例からうかがわれる基準
子どもの現状を尊重し、特別の事情がない限り、現実に子どもを監護養育している者を優先的に親権者とするケースが
多いようです。これは子どもの生活環境の急激な変化を最小限に食い止めるための処置といえるでしょう。
乳幼児については、特別の事情がない限り、母親が優先的に親権者になることが多いようです。母親とのスキンシップが
幼い子の養育にとって最も大切であると考えられるためです。
子どもが物心がつく年齢に達していればその子どもの意向が尊重されます。家庭裁判所の親権者指定の手続きでは
15歳以上の子については、その子の医師を聞かなければならないことになっています。また、子どもの意向は尊重されますが
100%それに拘束されるわけではありません。両親が離婚で紛争中であると、子どもも情緒不安定となって適切な判断が
しにくいものです。子ども自身の意向といっても、自分の背後にいる父または母の意向を自分の意向と錯覚している場合も
多く見受けられるからです。
養育費の問題と、親権者であるかどうかということは、個別の問題になります。養育費は経済力のある者が、子どもに対して
扶養の義務として支払うのですから、経済力の有無は親権者の決定についてはほとんど考慮されないようです。
婚姻中に不貞行為など有責行為があったことから離婚に至った場合、有責配偶者だからといって、親権者になれないという
わけではありません。
離婚する夫婦に数人の未成年者の子どもがいる場合は、特別の事情がない限り、一人の親が親権者になります。
血縁関係のある兄弟姉妹を分離することは、子どもの人格形成に深刻な影響を及ぼすからです。
その他、監護に関連のある諸々の要因を比較して決定されます。
※父母の身心状態・精神的健康
※家庭環境
※父母の子どもの監護に対する願望の強さと真摯さ
※監護補助者の有無
親権者を変更することはできるのか
離婚の際に、親権者を父または母のどちらか一方に決めますが、子どもの利益のために必要があると認められる場合は
後からいつでも親権を変更することができるようになっています。
一旦は、親権者を決めたものの、後に事情が変わって親権者をそのままにしておくことが子どもの福祉に合致しなくなる
場合があるからです。
親権者の変更は、子どもの親族の請求によって行いますが、仮に当事者双方に親権者変更の合致ができていたとしても
必ず家庭裁判所で親権者変更の調停、若しくは審判をしてもらわなければなりません。
この際には親権者決定の場合と同様、子が15歳以上の時は、子どもの意見を聞かなければならないことになっています。
なお、親権者の変更は何度でもすることができます。協議離婚によって親権者を決めた場合は、親権者変更の申し立てをする
ケースが多くあります。
これは、協議離婚では離婚を急ぐあまり、ひとまず親権者を決めておいて、離婚後にじっくり考えようとしたためか
または、親権者をどちらか一方にしないと離婚できないため、子どもの親権者になること、あるいはならないことを離婚条件
に出され、やむなく条件をのんで離婚してしまい、離婚後やっぱり納得できなくて、親権者変更の申し立てをするケースが
非情に多いことが最大の原因ではないでしょうか。
親権者変更の調停、または審判が成立した時は、離婚の調停や審判に場合と同様に戸籍の届出をしなければなりません。
親権者以外に監護者を決める
親権者が死亡したとしても、一方の親が自動的に親権者になるわけではありません。
親権者がいなくなるので後見が開始されますが、後見人が選任されないうちに家庭裁判所に親権者変更の申し立てをし
一方の親を親権者と定める審判があれば、一方の親を親権者として認める取扱いがなされる場合があります。
このように一方の親が親権者になりたいと希望するならば、親権者変更の申し立てを試みる方法があります。
親権には、身上監護権と財産管理権とが含まれていることは、周知の通りですが、離婚の際、とくに監護権を定めなければ
当然親権者が子どもを監護教育する権利をもつわけです。
しかし、子どもが小さい場合などに父を親権者として定めたら、実際に子どもの日常の世話ができるかどうか不安が残ります。
そこで、親権者とは別に、子どもの身の回りの世話やしつけや教育をする看護者を、定めることができるようになっています。
監護権の決め方は、親権者の選任とは異なり、離婚と同時に決めなければならないということはありません。離婚が成立した
後でも、監護者を決めることができます。
看護者及び監護について必要な事項は、離婚する父母が協議で決めるのが原則ですが、夫婦で協議が調わない時や、協議が
できないときは、家庭裁判所に申し立てで決めることができます。
具体的には家庭裁判所に、子の監護権の指定の調停または審判の申し立てをすることになります。
また、親権者が誰であるかは戸籍に記載されますが、看護者の有無や、その氏名は戸籍に記載されることはありません。
看護者を定める基準は、親権者を定める基準に準じることになり、一般的には、親権者ではない親にすることが多いのですが
別に親であることは法律上要求されていません。
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